ヒマチの嬢王 x フェルミ推定
ヒマチの嬢王 第1話 から「フェルミ推定」について
ヒマチの嬢王とは?
作者:茅原クレセ
『裏サンデー』に2018年から連載されている漫画である。
主人公は一条アヤネという歌舞伎町の元No.1キャバクラ嬢である。
その主人公がある出来事をきっかけに地元の鳥取県米子市朝日町(通称、ヒマチ)に帰ってきたところから話が始まる。
アヤネがすったもんだを経て、ヒマチでキャバ嬢としてではなく、ボーイ、そして、経営者として働いている姿を描いているストーリーである。
この漫画のおもしろいところは、キャバクラを舞台にしていながら、内容はキャバ嬢のドロドロではなく、どちらかというとキャバクラのビジネス面にフォーカスして話が進むところである。(なので、受ける印象としては、ドラゴン桜に似ている。)
その第1話で、アヤネが実家の母親に家賃を入れるように言われる。
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あらすじ
実家でだらだらと過ごしていたアヤネは母親から家賃5万円を納めるように言われる。
銀行にお金をおろしに行くが、残金は5千円。パチンコで増やそうとするも2千円しか増えず、、、
お菓子を母親に渡すことで誤魔化そうとするも、失敗し、仕方なく母親が経営するスナックで稼ぐことに。
しかし、そこはさすが歌舞伎町の元No.1キャバ嬢で、自分でお客さんを掴まえてきて、あっという間にボトルを何本も入れさせてしまう。
その活躍によって、店の3か月分の売上を稼いでしまうのだが、この3か月分の売上がいくらなのか、というのをフェルミ推定したいと思う。
フェルミ推定とは何?
フェルミ推定とは、実際に確認することが難しいことを、限られた情報を基にして、論理的に推論し、概算の答えを出す手法のことである。
GoogleやMicrosoftや外資系コンサル企業の就職活動中の面接試験で出題されることで有名で、例題としては、
富士山をどう動かしますか?
というような問いに対して、答えを出す時に用いられる。
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フェルミって誰?
エンリコ・フェルミ(1901年 - 1954年)というイタリアの物理学者である。
1938年にはノーベル物理学賞を受賞しており、アメリカの原子爆弾開発プロジェクトであるマンハッタン計画にも参加していた。
母親のスナックの3か月の売上はいくらか?
本題に戻り、母親のスナックの3か月の売上をフェルミ推定したいと思う。
本誌から確認できる情報
席数
・カウンター6席
・4~6名が座れるのソファ席のテーブルセットが2つ
基本システム
・飲み放題で1時間3,000円
アヤネが招き入れた客
・6名(最初に3名+途中から追加で3名)
アヤネが注文させた酒量(確認できる範囲)
・ドリンク:6杯
・ヘネシーXO:1本
・ドンペリピンク:3本
・MAVAM:5本
・モエ・エ・シャンドン アイス アンペリアル:7本
上記から推定される売上金額
基本料金
・途中で客が追加されているので、少なくても2時間はいる
→(途中から客が追加され、彼らは1時間はいる)と仮定する。
・金額:3,000円x3+6,000円x3=27,000円
アヤネのドリンク代
・1杯1,000円と仮定
・1,000円x6杯=6,000円
注文させた酒代
・ヘネシーXO:40,000円
・金額:40,000円x1本=40,000円
・ドンペリピンク:80,000円と仮定
・金額:80,000円x3本=240,000円
・MAVAM:15,000円と仮定
・金額:15,000円x5本=75,000円
・モエ・エ・シャンドン アイス アンペリアル:25,000円と仮定
・金額:25,000円x7本=175,000円
合計
・27,000+6,000+40,000+240,000+75,000+175,000=563,000円
3か月の売上として、563,000円は妥当なのか?
・1日あたりの売上563,000円÷90日=6,255円/日
・1日の売上が6,255円では少ないように感じる
では、1日の売上はいくらくらいか改めてフェルミ推定してみる
スナックなので、営業時間を20時~28時と仮定する。
・繁忙日(金曜と土曜)の推論
・カウンターが70%、テーブルが50%埋まる
・平均滞在時間1.5時間
・女の子へのドリンクは客1人から1杯
・20,000円のボトルが1日あたり1本注文される
・3,000円のキープボトルが1日あたり3本注文される
・金額
・基本料金
カウンター:33.6時間x3,000円=100,800円
テーブル:32時間x3,000円=96,000円
・女の子へのドリンク
来店人数:(33.6+32)÷1.5=43.7人
金額:43.7人x1,000円=43,700円
・高級ボトル
金額:20,000円
・キープボトル
金額:3,000円x3本=9,000円
繁忙日1日あたり合計
・100,800+96,000+43,700+20,000+9,000=269,500円
・閑散日(金曜と土曜以外)の推論
・カウンターが20%、テーブルが15%埋まる
・平均滞在時間1.5時間
・女の子へのドリンクは客1人から1杯
・3,000円のキープボトルが1日あたり1本注文される
・金額
・基本料金
カウンター:9.6時間x3,000円=28,800円
テーブル:9.6時間x3,000円=28,800円
・女の子へのドリンク
来店人数:(9.6+9.6)÷1.5=12.8人
金額:12.8人x1,000円=12,800円
・高級ボトル
金額:0円
・キープボトル
金額:3,000円x1本=3,000円
閑散日1日あたり合計
・28,800+28,800+12,800+3,000=73,400円
1週間あたりの売上金額はいくらか?
・269,500x2+73,400x5=906,000円
3か月の売上金額は?
・90÷7x906,000=11,648,571円
実際いくらくらいなの?
日本政策金融公庫の業種別経営指標によると、スナックの1客席あたりの年間売上高の平均は1,935,000円です。
なので、母親のスナックの場合、16席(テーブルで10席と仮定)なので、
16席x1,935,000円=30,960,000円/年
つまり、3か月の売上は、
30,960,000円÷4=7,740,000円
まとめ
・身近なところでも役に立つフェルミ推定
・地頭力は基礎学力の土台となるので、鍛えておいて損はない
この漫画は、ビジネス的な要素もありつつ、アヤネの快刀乱麻ぶりが非常に爽快で読んでいて、勉強になるし、気持ちがいいので、就活生や社会人にもおすすめできる。
GetBackers-奪還屋- x フェルマーの最終定理
GetBackers-奪還屋- 27巻 から「フェルマーの最終定理」について
GetBackers-奪還屋-とは?
原作:青樹佑夜
作画:綾峰欄人
『週刊少年マガジン』に1999年から2007年まで連載されていた漫画である。
主人公は美堂蛮と天野銀次のコンビで、裏新宿を中心に依頼者の奪われた物を取り返す奪還屋『GetBackers』としての活躍が描かれているバトル漫画ものである。
主人公の一人である美堂蛮は「邪眼」の持ち主で、目を合わせた相手に1分間の幻を見せることができる。
もう一人の主人公である天野銀次は電気ウナギのように体内で発電でき、それを自在に操る。
この二人が依頼人からの無理難題になんやかんやと応えていきながらストーリーが進むのがだが、27巻にその二人の回想回が載っている。
あらすじ
女子高生から飼い犬(ラッキー)を奪還してほしいという依頼を受けるのだが、その飼い犬は紆余曲折を経て、なぜかテレビ番組に天才犬として出演しており、テレビ局に取り合っても返してもらえない。
そんな中、ラッキーが番組に出演していると次の問題が出された。
「3 以上の自然数 n について、xn + yn = zn となる自然数の組 (x, y, z)を答えよ。」
それに対し、ラッキーは、
「No Answer」
と回答し、番組内では、さすがにこの問題は天才犬でも答えられませんでしたね。ちゃんちゃん。と締まるのですが、実はラッキーの回答が正解。
この違和感に美堂蛮が気付き、なぜラッキーは正解できたのか?そもそもラッキーはなにものなのか?という疑問を軸にさらにストーリーが展開される。
フェルマーの最終定理とは何?
ここで登場する定理、
「3 以上の自然数 n について、xn + yn = zn となる自然数の組 (x, y, z) は存在しない」
というのがフェルマーの最終定理である。
フェルマーって誰?
ピエール・ド・フェルマー(1601年 - 1665年)というフランスの数学者である。
天才数学者と呼ばれる彼には妙な癖があり、それが本の余白に自分の考えを書き残すというものであった。
そこには定理や予想が書き込まれていたが、その証明は十分なスペースが無いこともあり、省略されていることが多かった。
余白に書き込まれたこれらの予想の内の1つが最終的にフェルマーの最終定理と呼ばれることになった。
フェルマーの最終定理はなぜこんなに有名なのか?
彼の残した他の書き込みは、全て真か偽かの決着がつけられた。しかし、この予想だけは、誰も証明することも反例を挙げることもできなかった。
フェルマーが残した予想だったため、また、内容自体は三平方の定理がわかれば理解できるものであったため、数多の数学者が本問に挑んだものの、結論付けることができなかったのである。
このため、とうとうこの問題を解決した者に賞金が出されることになった。
1823年:フランス科学アカデミーが懸賞金をかけたが証明者は現れず。
1850年:フランス科学アカデミーは再び懸賞をかけたが、受賞者はいなかった。
1908年:パウル・ヴォルフスケール(資本家)が再び懸賞金をかけた。
三度に渡り、賞金を懸けたが結局結論が出ず。
解決したの?
解決しました。
フェルマーの死後330年経った1995年にイギリスの数学者アンドリュー・ワイルズによって完全に証明されている。
まとめ
・GetBackers-奪還屋-には学びのきっかけとなるネタが多数仕込まれている
・フェルマーの最終定理はシンプルな問題だが、なかなか解決できなかった
・死後330年経った1995年にようやく解決
連載されていた当時にこれを読み、数学を身近に感じるきっかけになった。
実はこのように数学の未解決問題を題材にしている漫画は意外に多く、例えば下記のようなものもある。
電波教師 12巻